「窓の防犯をしたいのですが、防犯ガラスと防犯フィルム、どちらがいいですか」——最近このご質問が増えています。カタログを見比べてもなかなか決まらない、という方が多いようです。
ガラス屋として先にお答えすると、私たちは防犯ガラスをおすすめしています。理由は強度や耐久性もありますが、いちばん大きいのは「取り付けるときの構造の違い」です。この記事では、その違いを公式資料にもとづいて整理します。あわせて、2026年に使える補助制度の条件もまとめました。

1. まず、防犯ガラスと防犯フィルムは何が違うのか
名前が似ているので混同されがちですが、この2つは「窓ガラスそのもの」と「窓ガラスに貼るもの」という、まったく別のものです。
防犯ガラス=2枚のガラスで、強い膜をはさんだガラス
防犯ガラスは「合わせガラス」の一種です。板硝子協会の説明では、2枚の板ガラスのあいだに合成樹脂の中間膜をはさみ、熱と圧力で圧着したガラスとされています。中間膜というのは、ガラスとガラスのあいだにサンドイッチされた、やわらかくて強い樹脂のシートのことです。
ポイントは、割れないガラスではないということです。防犯ガラスも、叩けば割れます。ただし割れても中間膜が残るため、穴を開けて手を差し入れるまでに時間がかかります。同協会も「ガラスを割ることはできても、中間膜が貫通を防ぎます」と説明しています。
なお、防犯グレードとされるのは中間膜の厚さが30mil(ミル)以上のものです。milはガラス業界で使われる厚みの単位で、30milはおよそ0.76mmにあたります。
防犯フィルム=できあがったガラスの内側に、あとから貼るもの
防犯フィルムは、今ある窓ガラスの室内側に貼る、厚手の透明なフィルムです。ガラスを替えずに施工できるので、工事が手軽で費用も抑えやすいという利点があります。
ただし「厚ければ何でも防犯フィルム」というわけではありません。あとで触れるCPマークの対象になるフィルムは、メーカーの公表資料によるとPET製で厚みが350マイクロメートル(0.35mm)以上のものに限られ、さらに日本ウインドウ・フィルム工業会が認定する「防犯フィルム施工技能者」が施工することが条件になっています。ホームセンターで売られている薄い飛散防止フィルムとは、別のものだとお考えください。
どちらにも共通する目安が「5分」です
防犯ガラスにも防犯フィルムにも、CPマークという共通の目印があります。CPは Crime Prevention(防犯)の頭文字です。官民合同会議の防犯性能試験に合格し、「防犯性能の高い建物部品目録」に掲載された製品だけが表示できます。
この試験の基準が「侵入開始から5分以上抵抗できること」です。5分という数字には根拠があります。侵入をあきらめる時間について、「2分以内」と答えた被疑者が17.1%、「2分を超えて5分以内」と答えた被疑者が51.4%——合わせておよそ7割が、5分かかるとあきらめるという調査結果にもとづいています。
よくある誤解:網入りガラスは防犯ガラスではありません
ガラスの中に菱形の金網が入った「網入りガラス」を、防犯用だと思っている方がとても多いです。あの金網は、火事のときにガラスが割れて落ちるのを防ぐためのもので、防火のために使われます。叩き割られにくくなるわけではありません。
2. ガラス屋が防犯ガラスをすすめる理由は「施工のとき」にあります
カタログの数字だけを見ていると気づきにくいのですが、現場で工事をしていると、この2つには構造上どうしても埋まらない違いがあります。ガラスの「いちばん端」の扱いです。
フィルムは、サッシとのあいだにすき間をあけて貼ります

フィルムは、ガラスの端ぴったりまで貼るものではありません。サッシとのあいだに、2〜3mm程度のすき間をあけて貼ります。これを業界ではクリアランスと呼びます。日本ウインドウ・フィルム工業会も、施工業者に対して3mmの間隔をあけて施工するよう指導しています。
これは手抜きではなく、きちんとした理由があります。
- 施工液と空気を抜くため……フィルムは水をつけて貼ります。端まで塞いでしまうと、液と空気の逃げ道がなくなります。
- 浮き上がりを防ぐため……サッシのきわにはガラスを固定するシーリング材が残っています。その上にフィルムが乗ると、あとから浮いてきます。
- 熱による伸び縮みを逃がすため……フィルムは日射を受けるとわずかに伸びます。すき間がないと、端が浮き上がることがあります。
つまりクリアランスは、フィルムを長持ちさせるために必要なものです。ただし結果として、その2〜3mmの部分にはフィルムが乗っていないガラスの素地が残ることになります。
防犯ガラスは、中間膜がガラスの端まで入っています

いっぽう防犯ガラスは、工場で2枚のガラスと中間膜を圧着して作ります。中間膜はガラスの端まで入っています。
しかも窓は、ガラスの端のほうがサッシの溝に差し込まれた状態で納まっています。この差し込まれている部分を、現場では「呑み込み(のみこみ)」と呼びます。防犯ガラスは、この呑み込みの部分まで含めて中間膜が入っているので、ガラス全面がむらなく同じ構造になります。
ちなみにCPマークの認定を受ける防犯フィルムも、条件として「ガラスの露出部全面、もしくは呑み込みを含むガラス全面に貼付されているもの」と定められています。部分的に貼っただけのものは対象外です。それだけ「端まで効いているか」が重視されているということでもあります。
誤解のないように書いておきます
「すき間があるから防犯フィルムは危ない」という意味ではありません。CPマークの認定を受けたフィルムを、認定された技能者が正しく施工すれば、5分以上の抵抗性能は確かめられています。クリアランスを覆うかたちでコーキング(すき間を埋める充てん材)を施工している場合も、同じように問題ありません。
私たちがお伝えしたいのは、「同じ5分でも、そこに至る構造が違う」ということです。フィルムは正しい施工に性能が左右されるのに対し、防犯ガラスは工場でできあがった状態で届きます。この差を、選ぶときの材料にしていただければと思います。
3. 費用と、その後にかかる手間はどう違うか
初期費用は、防犯フィルムのほうが抑えやすい傾向です
正直に書きます。施工費を含めた最初の費用は、防犯ガラスのほうがやや高くなる傾向があります。ガラスそのものを作り替えて入れ替える工事だからです。フィルムは今あるガラスをそのまま使えるぶん、抑えやすくなります。
ただし、金額は窓の大きさ・枚数・ガラスの種類・お住まいの状況で大きく変わります。数字は実際に採寸してからでないとお出しできませんので、この記事では傾向だけにとどめます。
フィルムには「貼り替えの時期」があります
ここは見落とされがちな点です。フィルムは貼りっぱなしで一生もつものではありません。
メーカー(3M)の公表資料では、室内側に貼ったフィルムの交換の目安は使用開始から10〜15年とされています(屋外貼りの場合は5〜7年)。経年で粘着力が落ちてはがれてきたり、透明フィルムが白く濁ったりします。同社は「フィルムの強度が落ち、引っ張っただけで破れてしまう状態となれば、飛散防止や防犯の効果が著しく落ちることは避けられません」として、10年が近づいたら総点検をすすめています。
防犯ガラスの中間膜は、2枚のガラスのあいだに密封されています。空気にも紫外線にも直接さらされません。これが「耐久性の面でも防犯ガラスをおすすめする」理由です。
ここまでの比較まとめ
| 防犯ガラス | 防犯フィルム | |
|---|---|---|
| しくみ | 2枚のガラスで中間膜をはさみ、工場で圧着 | 今あるガラスの室内側に現場で貼る |
| ガラスの端 | 中間膜が端まで入る。サッシの呑み込み部分も同じ構造 | サッシとのあいだに2〜3mmのクリアランスをあける |
| CPマークの基準 | 侵入開始から5分以上抵抗できること 防犯グレードの中間膜は30mil以上 |
侵入開始から5分以上抵抗できること PET製350マイクロメートル以上・認定技能者の施工・全面貼りなど |
| 初期費用 | やや高くなる傾向 | 抑えやすい傾向 |
| その後の手入れ | 中間膜は密封されているため、貼り替えは不要 | 室内貼りで10〜15年が交換の目安(メーカー公表値) |
| 断熱との関係 | 複層タイプを選べば、防犯と断熱を同時に取れる | ガラス自体は変わらないため、断熱は基本的に変わらない |
※ この表は一般的な傾向の整理です。実際にどちらが適しているかは、窓の種類・サッシの状態・ご予算・お住まいの条件によって変わります。フィルムが向いているケースもありますので、現地を見てからご提案しています。
4. 2026年、窓の防犯に使える補助制度の条件を整理します
ここが、実は選び方を大きく左右します。窓まわりの補助制度は現在3つの層に分かれていて、それぞれ対象になるものが違うからです。金額は年度や製品・サイズによって変わりますので、この記事では「どういう条件なら使えるのか」だけを整理します。
① 国/先進的窓リノベ2026事業(環境省)
いちばん規模の大きい制度です。ただしこれは省エネ(断熱)のための制度で、防犯のための制度ではありません。ここが大事な点です。
- 対象工事は6種類。ガラス交換/内窓設置/外窓交換(カバー工法)/外窓交換(はつり工法)/ドア交換(カバー工法)/ドア交換(はつり工法)
- 改修後の窓の性能でグレードが決まります。SSグレード Uw1.1以下/Sグレード Uw1.5以下/Aグレード Uw1.9以下(Uwは熱の伝わりやすさを表す数値で、小さいほど高性能です)
- 2025事業からの変更点:内窓設置はSグレード以上が対象になり、Aグレードは対象外になりました
- 工事着手は2025年11月28日以降。交付申請は2026年3月下旬から、遅くとも2026年12月31日まで。工事完了も2026年12月31日まで
- 申請は、事業者登録をしたリフォーム工事事業者が行います。住宅の所有者ご本人は申請できません
つまり「防犯ガラスに替えたい」というだけでは、この制度は使えません。断熱の基準を満たす窓にすることが前提になります。逆にいえば、防犯の機能をもった複層ガラスにして断熱の基準を満たせば、防犯と断熱を同時に取りながらこの制度が使えるということです。
※ この制度は予算の上限に達し次第、受付が終了します。公式サイトが公表している予算に対する補助金申請額の割合(概算値)は、2026年9月22日午前0時時点で25%です。お考えの方は、早めのご相談をおすすめします。
② 東京都/既存住宅における省エネ改修促進事業(令和8年度・クール・ネット東京)
この記事をお読みの方に、いちばん知っていただきたいのがこの制度です。東京都の助成には、通常の「高断熱窓」とは別に「断熱防犯窓」という区分が用意されています。
- 対象は、都内に住宅を所有する個人・法人および管理組合です
- 断熱防犯窓として扱われるのは、「断熱窓+防犯窓」として登録されている製品のみ。断熱の性能を満たしたうえで、防犯建物部品(CP認定製品)であることが条件です
- この断熱防犯窓を選んだ場合、1住戸あたりの助成上限が、一般の高断熱窓よりも高く設定されています
- 契約・着工の前に「事前申込」が必須です。工事を始めてからでは間に合いません
- 国の「住宅省エネ2026キャンペーン」や区市町村独自の制度とは併用できます。ただし都の資金を原資とした他の同種の助成金とは重複して受けられません
ここが今回のテーマとまっすぐつながります。東京都は「断熱と防犯を同時にやる窓」を、はっきり優遇しています。防犯のためにフィルムを貼るという選択では、この区分には入れません。
③ 区市町村/防犯機器等の購入補助
国・都の省エネ系とは別に、防犯そのものを対象にした補助もあります。東京都の「防犯機器等購入緊急補助事業」が区市町村を通じて実施されているもので、令和7・8年度の2年間の緊急対策とされています。申請先はお住まいの区市町村です。
たとえば当社のある杉並区では、令和8年度の「杉並区防犯機器等購入補助事業」で、対象機器に防犯フィルム・補助錠などが挙げられています。補助対象機器の購入費用(設置費用を含む)の3分の2が補助される制度です。申請期間は令和8年5月11日から令和8年12月28日までとされています。
正直に書きます:制度によって、有利なほうが入れ替わります
杉並区の令和8年度の対象機器には「防犯フィルム」は明記されていますが、防犯ガラスは記載がありません(2026年9月時点)。つまり区の防犯補助という点では、フィルムのほうが使いやすい場合があるということです。
一方で、国と東京都の大きな制度は断熱を軸にしているため、ガラスや窓を替える工事でなければ対象になりません。「どちらが得か」は、どの制度を使うかで変わります。制度の内容・対象機器・金額・期間は区市町村ごとに違いますので、お住まいの自治体の最新情報をご確認ください。当社でもご相談の際に一緒に整理いたします。
5. 「防犯だけ」で考えると、もったいないかもしれません

ここまで読んでいただいた方は、もうお気づきかもしれません。制度の作りが、「窓そのものを見直す工事」に寄せられているのです。
窓の防犯を考えるとき、現実的な方法は大きく2つあります。
窓カバー工法(窓交換)——窓を1つのまま、まるごと新しくする
今ある窓の枠を土台にして、その上から新しい窓をかぶせる工法です。壁も床も壊しません。枠ごと新しくなるので、古いサッシのすき間や建て付けの悪さも一緒に片づきます。
窓は1つのままなので、開け閉ては今までどおり1回です。毎日バルコニーに出入りする掃き出し窓には、この工法が向いています。防犯の機能をもったガラスを選びつつ、同時に複層ガラス・Low-Eガラスにして断熱の基準を満たすことができます。
内窓——今の窓の内側に、もう1枚の窓を足す
今ある窓はそのままに、室内側にもう1枚の窓を取り付ける方法です。窓と窓のあいだに空気の層ができるので、断熱の効果が出やすく、外の音も小さくなります。
防犯の面でも、副次的な効果があります。窓が2枚になるので、クレセント錠(窓の鍵)も2か所になります。開けるまでの手間と時間が増えるということです。ただしここは正直に書きます。内窓は防犯ガラスではありません。ガラスそのものが強くなるわけではないので、「入られない窓」ではなく「開けるのに時間がかかる窓」とお考えください。
1軒の中で、窓ごとに使い分けるのがいちばん現実的です
「家じゅうすべてを防犯ガラスに」と考えると、費用が一気に膨らみます。実際には、人目につきにくい裏手の窓・1階の掃き出し窓・道路から死角になっている窓など、守るべき優先順位があります。
その窓は防犯の仕様にして、それ以外は断熱を中心に。当社では、窓ごとに工法を変えるご提案をよくしています。防犯フィルムのほうが適している窓があれば、そうお伝えします。
なお、マンションの場合、窓・サッシは管理規約上「共用部分」として扱われるのが一般的です。工事の前に管理組合への確認・申請が必要になることが多く、取り扱いは建物ごとに違います。申請に必要な図面や仕様書のご用意もお手伝いしますので、ご相談ください。
よくあるご質問
Q1. 防犯ガラスにすれば、空き巣に入られなくなりますか?
いいえ、「入られない窓」にはなりません。防犯ガラスも叩けば割れます。中間膜が残るため、穴を開けて手を差し入れるまでに時間がかかるというのが正確な表現です。CPマークの基準も「侵入開始から5分以上抵抗できること」であって、「破れないこと」ではありません。その5分に意味があるのは、およそ7割の侵入者が5分でとあきらめるという調査結果があるからです。
Q2. 今のガラスに防犯フィルムを自分で貼ってもいいですか?
貼ること自体は可能です。ただしCPマークの対象になるフィルムは、厚み・対象となるガラスの種類・認定を受けた技能者による施工・ガラス全面への貼付などが条件になっています。市販の薄い飛散防止フィルムとは別のものです。また、強化ガラスに防犯フィルムを施工した場合はCPマークの対象外とされています。ご自分で貼る場合は、お手持ちのガラスの種類とフィルムの仕様をよくご確認ください。
Q3. 防犯ガラスにすると、部屋が暗くなったり見た目が変わったりしませんか?
中間膜は透明なので、見た目はふつうの透明ガラスとほとんど変わりません。すりガラス調の型ガラスをお使いの窓は、同じように外から見えにくいタイプを選べます。ガラスの厚みは増えるため、既存のサッシにそのまま納まるかどうかは、現地で採寸してからのご案内になります。
Q4. 補助金の申請は自分でやるのですか?
国の先進的窓リノベ事業は、事業者登録をしたリフォーム工事事業者が申請します。住宅の所有者ご本人は申請できません。当社は登録事業者ですので、申請を代行いたします。東京都のクール・ネット東京は、契約・着工の前に事前申込が必要ですので、工事のご相談と同時に進めるのが確実です。区市町村の制度は、ご自身で申請していただくものが多く、その場合も書類のご用意をお手伝いします。
Q5. 家じゅうの窓を全部やらないと意味がないですか?
そんなことはありません。防犯については、人目につきにくい窓・侵入されやすい位置の窓から優先的に手を入れるのが現実的です。断熱については、暮らす時間の長い部屋から始めても効果を感じていただけます。ご予算に合わせて優先順位をつけたご提案をいたしますので、まずは現状をお聞かせください。
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窓の防犯、まずは現状を見せてください
荒井硝子は、東京・杉並で創業68年の硝子・窓リフォーム会社です。
国家資格「硝子施工1級技能士」が在籍し、自社施工でおうかがいします。
YKK AP アイテム販売コンテスト2025 最優秀賞(全国1,000店舗中)を受賞しました。
お電話でも承ります:03-3338-4515
本記事の数値・基準は、以下の公式サイトの記載(2026年9月時点)にもとづいています。
一般社団法人 板硝子協会「防犯ガラス(防犯グレード)」「防犯合わせガラス(CPマーク)」/5団体防犯建物部品普及促進協議会「CPについて」/スリーエム ジャパン「窓ガラス用 防犯フィルム(CPマーク)」「ウインドウフィルムの経年劣化」/日本ウインドウ・フィルム工業会(フィルム施工時のクリアランスに関する指導内容)/環境省 先進的窓リノベ2026事業 公式サイト/東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)「令和8年度 既存住宅における省エネ改修促進事業」/東京都都民安全総合対策本部「令和8年度東京都防犯機器等購入緊急補助事業」/杉並区「令和8年度杉並区防犯機器等購入補助事業」
制度の名称・内容・対象・補助額・受付期間は年度ごとに変わり、予算の上限に達し次第、受付が終了します。区市町村の制度は自治体ごとに内容が異なります。最新の条件は各公式サイト、またはお住まいの自治体でご確認ください。